ワゴンリの車両たち(その3)
ワゴンリの車両が使用された代表的な列車といえば「オリエント急行」。もともとのオリエント急行は、第一次世界大戦前の1883年に運行を開始し、両次大戦の戦間期に黄金時代を迎えます。アガサ・クリスティの「オリエント急行の殺人」が執筆されたのもこの時期です。

しかし第二次世界大戦後には、急速に発達した航空機に旅客を奪われて衰退の一途を辿り、1971年にはワゴンリが寝台車事業から撤退してしまいます。オリエント急行は、その後も鉄道会社の所有する客車を使った普通の夜行列車になって細々と運行が続けられますが、それも2009年には廃止されています。
ワゴンリの豪華客車が再び注目されたのは、1974年公開のシドニー・ルメット監督作品「オリエント急行殺人事件」。ご存じのとおりアガサ・クリスティの同名作の映画化。撮影に際しては、欧州各地に残されていた黄金時代のワゴンリの鋼製客車が集められ、復元されて使用されました。

そしてこの映画にインスピレーションを受けて、ワゴンリの客車群を集めた観光列車が2つ運行を開始します。チャーターを主としたノスタルジーイスタンブールオリエントエクスプレス(NIOE、1976年運行開始)と、今も定期運行されているベニスシンプロンオリエントエクスプレス(VSOE、1982年運行開始)です。
http://www.grand-express.eu/
https://www.icmjapan.co.jp/iframe/belmond/iframe/
これらの列車は日本にも紹介され、時あたかもバブル期を迎えた日本の、その中でもバブルの申し子だったフジテレビ(!)が、NIOEの列車を日本へ持ってくることを企画して実現したのが「オリエント・エクスプレス‘88」です。
https://www.youtube.com/watch?v=jPVY4RnLXIY
https://www.katomodels.com/product/n/nioe88
列車は、1988年9月7日にパリのリヨン駅を出発して、フランス、ベルギー、西ドイツ、東ドイツ、ポーランド、ソ連そして中国を経由して同年9月26日分に香港の九龍駅に到着。香港から航送で日本に上陸して改装の上、10月17日からおよそ三か月に亘って、北は札幌から南は熊本まで、数度にわたるツアーが開催されて、日本国内を走行しました。私も大阪駅に停車している同列車を見に行きましたね。
結局、ワゴンリの客車は、一度きりとはいえ、アジア大陸の東に浮かぶ日本列島にも乗り入れたことにより、およそ百年のときを超えて、欧州およびアジアの両大陸を制覇したことになります。
この記事へのコメント
オリエント急行がジャパンマネーの力で極東まで来ちゃったよ~と当時、思っていました。
nioce!です。